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「車で送る」 部活生はすでに下校して人気のない体育館棟を二人は別々に出た。 生徒用玄関で靴を履き替え、校門の先で待っていた生徒を乗せ、教師はボディカラーがブラックの普通車を滑らかに走らせる。 すでに夜の帳が下りていた。 体育教師を隣にした馴染みのない助手席に緊張し、見慣れたはずの街並みが普段と違って見える。 凛は余所余所しく感じられる窓の外の景色にばかり目を向けていた。 なるべく運転席に座る郷野を意識しないようにするために。 最初に自宅付近にある目印となりそうな場所を尋ね、カーナビに入力して以降、寡黙な郷野は特に話しかけてくるでもない。 ラジオも聞かず、流れ込んでくる外の雑音が却って車内の静けさを誇張する。 初めての経験によって火照りに蝕まれた凛の体はなかなか外へ熱を逃がしきれずにいた。 仕舞いには些細な振動も手伝って制服下で露骨に発熱し、凛は、困り果てる。 どうしよう、こんなの恥ずかし過ぎる。 素直に言えるわけがない凛は鞄で隠していたのだが、郷野は、すぐに気がついた。 表示されていたルートを逸れ、しばし車を走らせて人気のない場所に停めると、可哀想なくらい縮こまっている凛を後部座席へ……。

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