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曇天の空から雪がちらつき始めた。
「うわ、寒さ倍増!」
「こんなの意味ないって、教室戻ろうよ~」
「バカ、キョーノに殺されるって」
二学期の終業式、今年の締め括りとなる大掃除で校庭の清掃担当となった生徒達は「寒い」と口々に言い合いながら雑に木箒を動かす。
風が強く、木々の落ち葉は掃いても掃いても降り積もる一方で生徒達はげんなりしていた。
「ホットココア飲みたい~」
「俺、肉まん食べたい」
「てかさぁ、藤崎、何でお前コート着てこなかったんだよ?」
「あ。大丈夫かな、って思って」
各自コートを着用しているクラスメートはカーディガン姿の凛を見、背筋をぶるりと震わせた。
「……あ、キョーノ来るぞ」
教師の中でも一際厳しい、目つきの鋭い、一年生の彼らより一回り年上である体育教師の郷野が清掃チェックのため雪のちらつく校庭へとやってきた。
生徒達はそれまでお喋りに勤しんでいた口をぴたりと閉ざし、木箒でせっせと辺りを掃き始めた。
式典のためスーツを着用していた郷野は上にミリタリージャケットを羽織った格好で、一年生の元にやってくると、薄着で凍えている凛にまず目を止め、そして……。
ばさりっ
速やかにジャケットを脱ぐと凛の華奢な肩に無言でかけた。
「掃除はもういい、集めたゴミを纏めて収集場に運んだら教室に戻れ」
それだけ告げると回れ右をして体育館棟へと戻っていった。
かけられたジャケットにあたふたと袖を通す凛を眺め、クラスメートは呟く。
「キョーノが生徒に親切にするの、初めて見た」
先月から郷野と秘密の関係で繋がっている凛は複雑な表情を浮かべた。
「郷野先生、いつも優しいよ?」
「どこが!?」
「たとえば~?」
どこが優しいのかと一斉に問いかけられて、凛は、彼とこっそり会った昨日の放課後を思い出した……。
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