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「藤崎ぃ、で、キョーノのどこが優しいって?」 「うん、えっと……その……」 言えるわけがない。 セ、セ、セックスのとき、すごく優しくしてくれる、なんて。 「てかさ、お前、顔赤いよ?」 「……」 クラスメートと校舎へ戻りながら、風に舞う雪を見、凛は自分には大き過ぎるミリタリージャケットの温もりにほっと一息ついた。 先生の匂いがする。 あったかくて、気持ちいい。 先生の腕の中にいるみたい……。 「クリスマスなのに予定がない~」 「カラオケ行こう、カラオケっ」 クリスマス、もちろん凛は郷野と一緒に過ごす予定だった。プレゼントも買っている。心から楽しみにしていた。 しかし何故だろう、今はこのジャケットを郷野に返すことが何よりも待ち遠しく思えた。 早く会いたいです、郷野先生。 スーツ姿の郷野は雪交じりの風に全身を嬲られながらも、スラックスのポケットに両手を突っ込んだり首を窄めたりせず、毅然とした佇まいで校庭から体育館棟奥にある教官室へ向かいながら、思った。 早く藤崎に会いたい。 さっき顔を合わせたばかりなのに、もう、次に飢えている……。 そうして教師は生徒に心を食べ尽くされ、生徒は教師に牙のない口で甘く屠られ尽くす。

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