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夕刻を当に過ぎて宵闇を抱いた時刻、校舎は怖いくらい静まり返っていた。 凛は、ちょっと物怖じしたものの、誰もいない廊下をひたひたと進む。 部活生でもない凛が何故こんな遅い時間帯に校内をうろついているのか。 その理由はたった一つ。 体育教師の郷野に会うために。 三学期のある日の放課後、凛は友達の家に寄って映画のDVDを見てから帰宅する予定だった。 学校近辺に建つマンションの友人宅を出たのは六時半頃。 同じ高校の制服を着た、運動部と思しき生徒達が重たげなスポーツバッグを肩から担いで帰るのを見かけ、バス停に向かっていた凛は足を止めた。 男子バスケ部の顧問である郷野は恐らくまだ学校にいるだろう。 ……会いたいな。 今日は廊下で擦れ違っていないし、先生が忙しくて、昼休みにこっそり会うこともできなかった。 まぁ、昨日、ドライブしたけど。もう帰ってしまったかもしれないけど。 でも、もしかしたら、まだ体育館にいるかもしれない。 ちょっとでもいいから会いたい、先生と。

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