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凛がおっかなびっくり目指す先は体育教官室だった。
本校舎と体育館棟は一階の渡り廊下で繋がっていた。
運動部の更衣室や体育用具倉庫が並び、教官室は最も奥の突き当たりに位置している。
風の吹き抜ける渡り廊下を前進し、さらに暗い通路へ。人の気配がまるでしない。天井の蛍光灯は全て消されて非常口の誘導灯だけがぼんやり光っている。
こ、怖い。
しかし、びくつきながらも凛は足を先へ進める。
そうして教官室の前に辿り着いた彼の表情は見る間に曇った。
中の電気、点いてない。もう帰っちゃったんだ、先生。
しょんぼりと項垂れた凛は落胆しきった足取りで回れ右しようとした。
がちゃり。
不意に背後で聞こえた、小窓付きのドアが開かれる音。
振り返ると真っ暗な室内を背にして通路へ出てこようとしている郷野の姿が。
「藤崎か……?」
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