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「先生」
凛は、たちまち笑顔になった。
ドアの取っ手を握ったままの郷野の元へ今にも跳び跳ねそうな勢いで駆け寄った。
「お前、どうしてこんな時間に」
「えっと、友達の家で映画見てて、帰ろうって思ったんですけど。もしかしたら先生がまだ学校にいるかな、って、思って」
ちょっと寄ってみたんです。
薄暗い中、凛は頬をうっすらと薄紅色に染めて郷野に照れたように笑いかけた。
先生、今、帰るところだったんだ。リュック持ってるし、これから戸締まりして用務員室に鍵を持っていくのかな。
オレ、どうしよう。
もうちょっと一緒にいたいけど、昨日も送ってもらったし、今日はバスで帰ろうかな。
こうして先生に会えただけで十分だし。
「先生、鍵、用務員さんのところに持っていくんですよね? オレ、今日は自分で……」
郷野に無言で腕をとられて凛は台詞を切った。
消灯した教官室へ誘われて目を丸くする。
先生、忘れ物したのかな?
首を傾げる凛を余所に、室内に最も愛しい生徒を連れ込んだ郷野はドアを閉じた。
「……先生――」
明かりも点けずに身を屈め、郷野は、無防備に自分を見上げていた凛にキスをする。
そのままドアをロックして。
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