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急な点灯に凛はまた驚いたようだ。
蛍光灯に照らされた、少女めいた大きな瞳は僅かに濡れており、目の前の郷野から恥ずかしそうに視線を逸らして俯こうとする。
そうはさせまいと、郷野は、筋張った長い指で顎を掬い上げた。
己の唾液で湿らせたばかりの唇をもう一度味わおうと顔を近づければ、凛は慌てたように口を開く。
「先生っ、教官室です、ここ」
「そうだな」
「ここは……何だか、ちょっと」
「恥ずかしいか」
「恥ずかしいっていうか、その……だって、いつ用務員さんや他の先生が来るか」
「体育教科の教員はもう帰った。見回りはまだ先だ」
「えっと、でも……やっぱり」
デスクに両手を突き、キスする寸前の姿勢で動きを止めていた郷野は凛に問いかけた。
「じゃあ、やめるか」
普段は鋭く尖らされている眼差しに愛しい生徒への欲望を素直に露にし、郷野は凛を見つめた。
自分を切に求める郷野の真っ直ぐな視線に凛は何も言えなくなった。
かろうじて首を左右に振ることくらいしか、できなかった。
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