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その後、目的もなく周辺を散策し、昔懐かしいレトロな空気漂う商店街や路地裏をぶらついて、普段とお決まりのコースをなぞった。 市街地の夜景が一望できる、中心部から少し外れた高台。 午後六時を過ぎ、日が落ちてグラデーションがかった空の彼方でひんやり笑う三日月の下、瞬き始めた街。 展望台のある公園へと続く曲がりくねった道の途中、ガードレール脇のスペースに停めた車の助手席から、凛は自分が暮らす街を繁々と眺めていた。 「キラキラ光って、綺麗で。遊園地みたいです」 シートベルトを外した郷野はハンドルに両腕を乗せてもたれかかり、凛を見つめていた。 運転席から一直線に向けられる眼差しに、当然、凛は気づいていたが。なかなか視線を繋ぎ合わせようとしない。相も変わらず照れているようだ。 「藤崎」 郷野は片手を伸ばして滑らかな頬に触れてみた。 凛は運転席の方へ照れくさそうに顔を傾ける。 覚束ない外灯の薄明かりに照らされた、愛しい生徒の、くすぐったそうな表情。 頬の上で何度か指先を滑らせれば緊張が溶けたのか、唇をふわりと綻ばせた。 「藤崎」 意味もなくもう一度名前を呼んで、郷野は、ハンドルに預けていた上半身を起こした。 シートと華奢な体の間に片腕を潜り込ませて抱き起こし、顔を近づけて、キスを……。 「ウチに来るか」 てっきりキスされると思って目を瞑りかけていた凛はきょとんとした。 「今日じゃなくていい。春休み中、泊まりにくるか」 郷野先生の家におおおお泊まり?

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