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「凛、そろそろごはんよー!」 「あ、はーい……」 暗い部屋で凛はもぞりと起き上がった。 傍らに置いていた携帯を念のため覗き込み、郷野から何の連絡も来ていないことを知ると、がっかりした。 先生は普段からあんまりメールをしない。 いつ何時にどこで会うか、必要最低限のことだけしか送ってこない。 オレもなるべく送らないようにしてる。忙しい先生に返信の手間をとらせたら悪いから。 だけど、今日は、さすがに、ちょっと。 「りーん!!」 「はーい……」 階下で自分を呼ぶ母親に空返事をしつつ、ベッドに座り込んだ凛はメール画面を開いた。 便利なメールアプリを携帯にインストールしていない教師に向け、ポチポチと文章を作成する。 お泊まり楽しかったです、桜綺麗でしたね、当たり障りのない内容を綴り、最後は質問で締め括る。 -先生と真葵さんはどういう関係なんですか?- 「めんどくさいって思われるかな」 「凛、食べちゃうわよー」 凛は送信ボタンをタップしようとして、迷った。 もしかして今もまだ一緒にいるのでは、そんな疑念に、胸の奥が歪に軋んだ。 ……ちょっと待って。 ついさっき先生は裏切ったりしないって、そう信じたばっかりだよね? それなのにもう疑ってる。 今度は男の真葵さんを相手にして。 「今行くっ」 自分を呼び続ける母親に凛は返事をし、ベッドを出、部屋を後にした。 作成したメールは送信せずに削除して。

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