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宮坂と別れた凛は新しくあてがわれた二年生の教室に到着した。
名前順で指定された、ほぼ中央の席に着く。
以前と何一つ変わらないようでいて、ふとした瞬間、新鮮に感じられる空気。
凛は教室全体をきょろきょろ見渡してみた。
もちろんクラスメートは変わっている。校内で頻繁に見かけた同級生もいれば全く見覚えのない顔だってある。
多くの者が共通して暗い表情をしていた。
先程、宮坂に声をかけられるまで凛と行動を共にしていた友達も笑顔を封印し、何故か虚ろな眼差しとなっている。
周囲を取り巻く妙な雰囲気に凛がきょとんとしていたら。
教室前方のドアが開かれた。
「全員、席に着け」
本日からこのクラスの担任となる体育教師の郷野がスーツ姿でやってきた。
すでに席に着いていた大半の生徒らは縮こまる。
よりによって学校一厳しいと言われている先生が担任になるなんて、そう心からクラス替えを嘆き、緊張感に漲った。
一人、凛だけが満開と言ってもいいくらいの笑顔でいる。
仲のいい友達からは「恐怖の余り藤崎が壊れた」なんて思われていることを、浮かれている生徒は、知らない。
まさか先生が担任になるなんて。
昨日、もしかして車で何か言いかけたのは、このことだったんですか?
『明日のことなんだが、凛……』
正にその通りであった郷野、愛しい生徒についついリークしそうになり、寸でのところで堪えたわけだ。
「一先ず学級委員を決める」
見るからに張り詰めた雰囲気など一切気にすることなく、体育教師は、新学期最初のホームルームを開始する。
「立候補はいるか」
何かと雑用を任される損なポジション、その上指示を出すのは郷野と来ている、誰もが敬遠したがるはずだった。
「はいっ」
手を挙げたのはもちろん……。
秘密の関係にある教師と生徒。
二人は恋人同士だ。
end
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