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二年 夏
三年生最後の大会は、県大会一回戦で敗退した。
人数の多い三年生は、全員はベンチに入れなかった。
スタメンで出場した稔は、そのことをとても残念がっていた。
今まで一緒に頑張ってきたのだから、全員でベンチに入りたい。
仲間思いの稔らしいと、真崎は思った。
口には出せなかったが、その三年生たちを蹴落としてでも、真崎はベンチに座りたかった。
最後に稔と一緒に試合に出たかった。
県大会は、大差での敗北だった。
最後まで声を張り上げて応援をしていたが、途中からは涙が溢れて止まらなかった。
終わってしまう。
その思いが胸をよぎった瞬間、涙がぼろりと溢れ出し、改めて自分の思いを実感する。
寂しい。
稔が引退してしまうことが。
部活に行っても、もう稔がいないことが。
部室で、ふざけたりできないことが。
一緒に帰ることがなくなることが。
あの笑顔を、毎日見れなくなってしまうことが。
先輩たちの引退試合でそんなことを思っているなんて、と自覚はあったが、それでも気持ちは止まらなかった。とにかく、稔が引退してしまうことばかりが浮かんで来て、泣きながら、大きな声を出し続けた。
もしかしたら、まだ勝てるんじゃないか。
そんな期待は、体育館に響く電子音で打ち砕かれる。
試合は、終わってしまった。
涙でにじむ視界の中で、選手たちが挨拶をして、こちらに戻ってくる。
ベンチに置かれた荷物を手にとって、みんなで体育館の外へと走った。
周りもみんな、泣いていた。
選手も補欠もベンチに入れなかった部員も皆、ただただ泣いていた。
ベンチから持ってきたタオルを、先輩たちに渡していく。
真崎が持っているタオルの中に、稔のものもあった。
「みのる先輩……」
青いタオルのタグに、 稔 と手書きされていた。
タオルを受け取った稔は、何も言わず、タオルで顔を覆った。
う、う、と稔の嗚咽を聞きながら、真崎も、くしゃくしゃになった自分のタオルで頰を乱雑に拭う。
泣きすぎて、顔があつい。頭がガンガンした。
悔しくて、悲しくて、寂しい。
こんなに泣けたんだと自分でも驚くほど、よく涙が出た。
みんなが泣き止んでも真崎の涙は止まらなくて、それをみて、稔が笑った。
涙と汗でぐしゃぐしゃなその笑顔は、それでもとても眩しかった。
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