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惨敗

『ゲホ・・・・ゲホッ・・・・』 ああ・・・・・ く、苦しかった・・・ 酸欠になりかけた肺に 新鮮な空気を取り入れるため、深呼吸を繰り返す。 『お前ら、佐野山を殺す気か。』 『『ごめんなさい。』』 助けてくれた誰かの怒った声と、 玲音と咲哉の謝る声が聞こえる。 おお、珍しい・・・。 この珍しい光景を是非、自分の目で見てみたい・・・。 『ゲホッ・・・・ゲホゲホッ・・・・ !!』 と、思うけど 今の俺は・・・息をするので精一杯なのだ。くそぉ・・・なんか すごく残念だ。 『エホッ・・・エホッ・・・・』 ああ・・・ 空気、うまい。 少しして 落ち着いてくると、助けてくれたヤツが気になって、とりあえず、お礼を言わなきゃ・・・と その人物を見れば・・・ずっと前にも話したことあるヤツだった。 『大丈夫か?佐野山。』 『う、うん・・・ありがとう。』 ソイツは「いいって、いいって」と笑うと、玲音と咲哉に向き直る。 そして、呆れたように、大きく ため息をついた。 『お前ら・・・学校でイチャイチャすんなって言っただろ?そういう事は、家に帰ってからにしろよな。』 『え、ごめーん。』 『つい、可愛くてな。』 おそらく、ちっとも悪いと思ってない2人は へらへらと笑いながら、俺の傍に来て 後ろから肩を抱く。 『くそお・・、見せつけるなよなー。』 『ふふ、ごめんねー。』 『はは、すまんな。』 2人は、素早く俺の頬にチュッとキスをする。 『・・・はっ!なっ、なにする・・・・ !?/////』 『んふふ。みっきーもごめんね?』 『ふはは。悪かったな、みー。』 そう言って、今度は 優しく抱きしめてくる。 まるで、見せつけるように。 『うがーっっ !!イチャイチャすんなーっ! ムカつくわ!腹立つわ!くそぉーっ!』 俺の命の恩人は、結局 最後は玲音と咲哉に惨敗を喫し、地団駄を踏みながら去っていった。

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