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文化祭☆21
* * * * * * *
『うがー!間に合わん!』
『早く!早く!』
『佐野山!早く刺して!』
『う、うん!』
文化祭が始まって、1時間。
俺のクラスは 、とんでもなく、めっちゃくちゃ賑わっていた。
お客さんが たくさん入ってくれて 本来なら嬉しい悲鳴!・・・なハズなんだけど、想定外だったのは、丸ごと1本サイズより、ハーフサイズの方が売れ行きがいい事。
用意していたハーフサイズは あっという間に売れてしまい、慌てて追加を作り出したものの追いつかない・・・そんな状況だ。
そうだよなー。
よくよく考えたら、女の子は丸ごと1本なんて食べないよなぁ。
お腹いっぱいになっちゃうもんなぁ。
せっせと バナナに割り箸を刺しながら、そんな事を思う。
『うわー!チョコが固まらないー!』
『わ!垂れる!垂れる!』
『早く、うちわ!扇いで!』
忙しさと焦りで チョコレート&トッピング担当のクラスメイトがプチパニックに陥っている。
その時、
『固まらないなら、これに入れたら?』
と 紙コップを差し出す ドレス姿の・・・男?
って・・・あれ?このドレス、この声・・・・
『あ。』
『どーもー。』
そこに立っていたのは、玲音と咲哉のクラスの 男子生徒、あの俺の救世主さんだった。
『あれ?なんで・・・?』
『うん。なんかさー、佐野山のクラスが 大変そうだって聞いたから見に来たんだ ♪ 』
男子生徒は にっこり笑うと、紙コップの入った大きな袋を作業台のあいてるスペースに置く。
『おおー、なるほど!』
『いいアイデア!』
俄然、元気の出た みんなが すごい勢いで 紙コップに入れたチョコバナナを 売り場に運んでいく。
『・・・・・!あ、ありがとう・・・!』
俺だけじゃなく、俺のクラスのピンチにも颯爽と現れるなんて・・・・
救世主どころか、ヒーロー・・・・っ !?
なんて、
なんて、いい人なんだ・・・!
俺は羨望の眼差しで、男子生徒・・・いや、ヒーローさんを見つめた。
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