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動物園デート☆6
え・・・・・?
ポタポタと 体から こぼれ落ちる雫を見て 呆気に取られる。
そして、怖くて 後ろを振り向けない。
『・・・・・なんで・・・・?』
『『『『・・・・・・・・・』』』』
なぜ こんな事になったのか 聞いても、
何故か みんなして固まったまま。
何も答えてくれない。
・・・・・・なに?
なんで 誰も 何にも言わないの?
誰も動かない。
奇妙な静寂は しばらく 続いた。
でも、そんな中 最初に動いたのは、1番小さい ぬいぐるみを抱いた男の子。
『おにーちゃん、これ。
びしょびしょ、かぜひいちゃう・・・』
ゴソゴソとリュックから タオルを取り出して 「はい!」と、俺に差し出してくれる。
俺以外の3人も、心配そうな男の子の声でようやく ハッと我にかえったらしく
男の子のお父さんが 男の子のタオルで俺の体を拭き始めた。
玲音と咲哉も 持ってたハンカチで 俺の頭を拭きながら、
「すぐに乾くから大丈夫」だの、
「売店にTシャツあった」だの、
取り繕うように言ってくる。
・・・けど、そんな事よりも
これはなんの水なんだろう・・・・?
気になっているのは、そこ。
そして、なんで 俺は こうなってしまったのかって事。
『・・・何で、俺・・・濡れてんの?』
『『『・・・・・・・・』』』
もう1度、聞くと あからさまに顔を反らす 玲音と咲哉と 男の子のお父さん。
みんなして 急に口をつぐんでしまうのは
なんで・・・・・?
一体、俺に何が起こったんだ・・・?
すると、俺に タオルを渡したのが よっぽど
嬉しかったのか、すっかり ご満悦な様子の男の子が・・・無邪気に 聞いた。
「ねえねえ!お兄ちゃん!
ゾウさんの シャワー、きもち よかった?」
『『『あ・・・・・!!』』』
一瞬、その場の空気が 凍りつく。
『・・・ゾウ?・・・・・シャワー?』
男の子の言葉を反復して 意味を考える。
が、そんな俺を 突然 玲音と咲哉 が俺の両脇からがっちりと腕を絡めて、ぐいぐいと引っ張って歩き出した。
『さあ、みっきー!Tシャツ買いにいこーね!』
『きっとみーに似合う服があるぞ!』
『『楽しみだねー(なー) ♪』』
半ば強引に ずるずると引きずられ、にこにこ手を振る男の子と ひきつった顔で立ち尽くす男性の姿が どんどん 遠ざかっていく。
・・・・え?え?
ちょっ
・・・・え?え?
ちょっと待って?今、なんて言った?
ゾウのシャワーが どうだこうだ とか・・・
ゾウのシャワー・・・・・?
シャワーって・・・・・
鼻から出すのテレビで見たことある・・・・
ブシャーって・・・あれ?
つまり、ゾウの・・鼻から出た水・・・って事ぉ !!??
俺、ゾウの鼻の水 被ったの???
ウソだろ─────── っっ !!
『・・・ゾウ・・・、鼻・・・・、水・・・・、・・・・っっ、
いや――――――っっ!!」
力いっぱい叫ぶと・・・離れていく ゾウの檻の中から ブシャッと 水が!噴き出すのが見えた。
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