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進級☆9

心の叫びが聞こえたのか、すぐに 俺の様子に気づいた本多くんが2人を止めに入ってくれた。 『おい!小早川!邑上・・っ!』 『なにっ!』 『なんだ!』 『うぐ・・っ・・!』 だけど、2人は聞く耳を持たず、本多くんを威嚇し、俺を抱きしめる腕は ますます 力強くなる。 い、痛い・・・! 苦しい・・・っっ!! もうダメ・・・・! もう・・・・・・・ダメだ、 と思ったその時・・・ 『こら!佐野山を離せっ!』 本多くんが、玲音と咲哉の頭を 勢いよく 叩(はた)いた。 『い、いたぁっ!』 『い、いてぇっ!』 玲音と咲哉が頭を押さえて うずくまる。 『な、何すんの~!』 『痛いだろーがっ!』 『“何すんの”じゃないっ! 佐野山が苦しがってんだろっ!?』 『・・・え?』 『・・・ん?』 『ゲホッ、ゲホ・・・ッ・・』 足りなくなった酸素を 思いきり吸いこんで 思いきり咳き込む俺を見て、どういう状況だったか理解したらしい・・・2人が 慌てて立ち上がって 背中を擦りだす。 『大丈夫?みっきー』 『大丈夫か?みぃー』 『う、うん・・・』 『まったく・・・! 佐野山のコト、大好きなのは分かるけど やりすぎなんだって!』 『『だ、だって・・・・』』 『“だって”じゃないっ!』 本多くんが また、2人の頭を叩(はた)いた。 ペンペン!といい音がして、玲音と咲哉が 頭を押さえて再度 うずくまった。 『だから、痛いってばー!』 『いってぇ!なんでだ!?』 『なんでじゃないっ!アホッ! よーく考えてみろっっ!! 俺と佐野山が いい雰囲気になったところで、 どーにかなる訳ないって分かるだろ!? いちいち いちいちヤキモチ妬いたりしないで男らしくドーン!と構えてろっ!アホッ!』 『お・・男らしく・・・』 『ド・・ドーンと・・・』 いつもは穏やかで まさに「良い人」の本多くんの本気の怒りに 玲音と咲哉は・・・ ぽか~ん、と口を開けたまま 本多くんを見上げている。 『・・・・分かったか!? 分かったら、ごめんなさい は!?』 『あ・・、ごめんなさい・・・っ!』 『お、おぅ・・!すまん・・・っ!』 玲音と咲哉が 素直に頭を下げた。 だがしかし、本多くんは ますますボルテージが上がっていく。 『俺じゃないっ!佐野山にだっ! ちゃんと心を込めて謝れっっ!!』 言われた2人は、慌てて俺の前に来て 深々と頭を下げた。 『み、みっきー、ごめんなさい!』 『みー、悪かった!許してくれ!』 『え・・・・う、うん・・・・』 おお・・・本気で2人が謝ってる・・・! おおお・・・! 本多くん・・・すごい! やっぱり、俺の救世主・・・っ! すごい・・・っ! すごーい・・・っ! 『本多くん、カッコいい・・・・!』 憧れと羨望を込めて、ポロリと出た言葉。 玲音と咲哉が ギョッとした顔で俺を見た。 『え・・!ちょ、ちょっと、みっきー!?』 『そんなキラキラな目で見ないでーっ!』 『え・・・? だってホントにカッコいいから・・・・』 『『え・・・・・えぇー!?』』 ショックを受ける2人。 さっきまで 牙をむいていた大型ワンコとは思えないくらい しょぼんと肩を落として、垂れた耳まで見えるような・・・・ なんか、笑える。

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