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迷子。

長い廊下を ひた走る。 記憶を辿りながら。 行き止まりまで行って、角を曲がって・・・ そう、確か こっちだった。 よし!ここが玄関だ・・・・・っ! 『・・・・あれ?』 この角を曲がれば、玄関に来るハズ・・・・・だと思っていたのに、全然 違うところに来てしまったようだ。 なんで・・・・?? 間違えた? 慌てて、引き返す。 咲哉の部屋の前まで戻れば分かるかも。 そう思ったんだけど・・・咲哉の部屋が どこか 分からなくなってしまった。 もう、記憶もなにも あったもんじゃない。 『ど、どこだ、ここは・・・・・』 とにかく 移動していたら辿り着けるだろうと、行き当たりばったりで、勘を頼りに 走った。 けど、一向に玄関は見つからない。 『なんなんだ、ここは!・・・迷路か!』 なんで こんなに広いんだ!! 帰りたい・・・・! 家に・・・俺のオアシスに・・・・・っ! 走っても走っても 見つからない。 このままでは、一生 ここから出られないんじゃないか・・・・と、だんだん心細くなってくる。 一旦、立ち止まって壁にもたれる。 それでなくても(色々あって。)疲れきっていた俺は・・・・壁にもたれたまま、ずるずると座り込んだ。 ちょっとだけ・・・・・ ちょっとだけ、休憩・・・・。 目を閉じて、息を整える。 ちょっとだけ・・・ ちょっとだけ、だから・・・。 余程、疲れていたのだろう。 ちょっとだけ、のつもりが、 そのまま・・・・、 俺は 深く深く 眠りの渦の中へ のみ込まれていった・・・・・。

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