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だから、永遠 ~桜の下で~

訳あり少年×マイペース弁護士(国崎)です。 ※  何も言わなくても、目を見るだけで相手の心が解るですって?  生憎、私は超能力なんてスキルは持ってませんから、そんなことは出来ません。  夢が無い? 潤いが無い?  逆に言わせて頂きますと、そんな風に無邪気に信じられる人の方が病気なんですよ。  恋の病。ね、言い得て妙でしょう?  あの写真が、気になりますか?  あれは、私の職場の近くにある公園で撮ったんです。  隣に写っている彼が――(れん)が、好きだったんですよ。写真を撮るのが。  とは言え、私は彼を怒らせてばかりいましたからね。写真はあれ、一枚きりです。まあ、気に入っているからいいんですけどね?  初めて会った時、廉は満開の桜の木を眺めていました。  その顔がこちらに向けられた瞬間、私は思いました。  ……ああ、一目惚れというのは本当にあるんだな、と。  見ての通り、廉は男です。とは言え、前にも言った通り私はネコなんで全く問題ありません。  確かに、廉は私とは十歳年が離れていましたし、同じ年頃の子達と比べても小柄で童顔でした。短い黒髪と小麦色の肌。高校生、いや、下手すると中学生と言っても通ったかもしれませんね。  ……けれど、あの目が。  桜の花を見つめ、次いで私に向けられた目が。  あまりにも哀しげで、いっそ優しいと勘違いしてしまいそうな――廉のそんな目に、私は一瞬で魅入られたんです。  廉は、北海道からやって来たのだと言いました。だから、四月の桜を見るのが初めてで、つい見惚れてしまったそうです。  春とは言え、大学や会社は始まっている時期であり、時間でした。  休暇中なのだ、と屈託なくそう言って笑った後、廉は通行人を呼び止め、持っていたカメラを渡して、私と二人で桜の木を背にこの写真を撮りました。 「友達になった記念。写真出来たら、渡すな?」  笑った顔はひどく眩しく、可愛く見えて。しかし目だけは、相変わらず哀しそうで――気が付くと、私は廉にこう言ってました。 「すみません。私は、貴方の恋人になりたいんですけど」  私に向けた笑顔のまま固まって、しばし沈黙した後――音がしそうなくらいの勢いで真っ赤になり、廉は私から飛び退きました。 「俺、男! 年下だからって、からかうなよっ!」 「解ってますよ。私は、年下の貴方に『抱かれたい』と思ったんですから」  睨むように見上げながら喚く彼を見て、私は心外だと思いました。そしてその気持ちのまま答えて、廉を抱きしめました。  当然、彼は暴れましたが体格や腕力の差は歴然ですからね? 腕の中の温もりを感じながら、私は大人で本当に良かったと、しみじみ思いました。  廉の事を、もっと知りたかったんです。友達なんかでは全然、足りないと思ったんです。  そして、あの日から私と廉の、追いかけっこが始まったんです。

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