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メロディ
海棠×月也
※
料理を作ったり、一緒に買い物に出かける時。海棠は、歌を口ずさむようになった。
聞いた事があったり、なかったり。ただ一つ言えるのは、それがどれも上手だと言うことだ。
「僕は、機械だから」
だから一度、聞いた曲なら忠実に再現出来るのだと。自慢するのではなく、いや、むしろ淋しそうに。
そう言っていた少年は、けれどある日を境に熱心に、同じ歌を口にするようになった。
……同じ歌、と言うと少し、語弊があるかもしれない。
その歌には歌詞がなく。
柔らかい響きはけれど、いつ聞いても微妙に違うからだ。
「カイ……それ、何の歌なんだ?」
尋ねた月也に、海棠が笑う。あの時とはまるで違う、眩しい笑顔で。
「歌じゃないよ。降っている雨の音! 前に月也、聞いていると眠くなるって言ってたでしょ?」
驚いて目を見張る月也に、でも、と少年が言葉を続ける。
「同じ音ってないんだ。降り方とか、どこに落ちてくるかとか。聞く度に違うんだよ?」
真面目な顔で、熱心に力説する相手に。
見開いていた目を、笑みに細めて――月也は海棠の肩に寄り添って、目を閉じた。
「……聞かせて?」
愛しい君が聞いている音を――どうか、俺にも感じさせて?
……月也の言葉に微笑んで、海棠は柔らかい声で歌い出した。
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