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ミラクルバレンタイン

廉×京 ※  二月十四日は、彼・国崎京の誕生日だ。  実の甥も知らない誕生日を国崎はここ数年、ある場所で過ごしている。 「……廉」  とある病院の一室――その部屋の主である少年の名前を、国崎はいつものように呼んだ。もっとも、返事がないのもいつもの事である。  彼の最愛の相手は数年前から時を止め、冷凍睡眠(コールドスリープ)されているのだから。 「バレンタインと一緒だと、誕生日プレゼントもチョコなのか?」  桜の季節に会った頃、誕生日を聞く代わりに自分の誕生日を教えると、廉は真顔でそう尋ねてきた。  散々、タラシだのムッツリスケベだの言われていたので、笑われるか呆れられるかと思ったが――そのどちらでもない事に驚き、次いで国崎は微笑んだ。 「チョコレートじゃなく、ケーキを作る子はいましたね。あと、メインが誕生日プレゼントで、おまけにチョコをつけたり」 「そっか……誕生日、だもんな」  感心したように呟いた廉が可愛くて、ますます笑みが深くなる。そんな国崎に、馬鹿にされたと勘違いしたのか廉は唇を尖らせて言った。 「何だよ! 誕生日って特別だから一緒にされたらってちょっと、思っただけで……あ、それとも今の、京がモテるって自慢だったのか!?」 「いえ、女性にモテても全く嬉しくありませんし」 「プレゼントしてくれた女(ひと)達に謝れ!」 「廉は『私の』誕生日を、祝ってくれないんですか?」 「……やる」  そう言って好物の唐揚げをくれた廉を、国崎は愛しさのままに抱き締めた。  ……直後に、思いきり暴れられてしまったけれど。 ※ 「貴方と過ごせるのが、最高の誕生日プレゼントですよ」  あの時、告げたのと同じ言葉を口にして国崎は廉の入っている機械の、ちょうど顔が見える部分に唇を落とした。  ……返事も、ぬくもりも今はないけれど。  目の前に、確かに廉がいる――それだけで、国崎には十分だった。

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