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第6話

打ち合わせの時間まで、街をプラプラ歩き回った。それは自己嫌悪からなんとか脱出するため。 「あー、宮本さんこんにちはぁ。」 「須賀さん!今日は本当突然でごめんなさい!」 「大丈夫ですよ。どうせ暇やったし」 会議室に入って担当者さんの宮本さんと話をする。次の話はこういうのがいいって案を書いた資料を渡して、ある程度の話の流れまでを説明する。 「何か······須賀さんっぽくありませんね。前作の方が須賀さんっぽさがありました。これは······本当に書きたいお話ですか?」 「··················」 提案したのは殺人鬼の話。 ずっと一人で暮らしとって、他人の感情なんてわからん奴が、ただの一般人として生活に溶け込む中で会った人を殺していくんやけど、自分はこの行為から何を求めてるんかって自問自答するような…シリアスな感じの話。 書きたいかなんてわからへん。今までもずっとそうやったから。 「ここに恋愛話が練り込まれていたのならわかります。けど···一切ありませんよね。」 「恋愛なぁ。······なんやもう、飽きてきてもうて。ほら、恋愛って疲れるやん?」 「······ずっと思ってましたけど···何かありました?前作を書き始める少し前から、様子がおかしかったです。暫くは何ともなかったのに」 ええ、もう。そりゃあもう···色々ありました。息をすることも、溜息を吐くことも、それもしんどいって感じるくらい。 「このお話は、本当に書きたいなら書いてください。でもその気持ちが今月末までに出てこないなら、やめておきましょう。須賀さんの良い部分が消えてしまうような気がします。」 「······そう、ですね」 忘れたいのに、忘れられへんねん。 無理矢理恋愛のことは考えんでおこうって思って、殆ど興味の無いジャンルに手を出した。多分宮本さんはそれを見抜いてる。 暫く話し合いをして、家に帰った。 冷蔵庫を開けてビールを取り出し一気に飲む。あかん。仕事にまで支障が出てきた。ほんま格好悪い。あの時大人な対応なんてせんと、もうずっとここにおってって言っとけば良かったんかなぁ。 そんなもやもやな気持ちは消えることなく、将斗と約束した日がやって来た。

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