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第9話

「わあ!!美味しい!何これ···柔らかい!!」 「やろ!!ほんまここ美味いねん!!」 美味しそうに焼かれた肉を食べていく将斗。なんかその食べっぷり見とったら元気なるわ。 「健人さんもちゃんと食べて!ほら、あーん!」 「え、ええ···どういうノリ···?いただきますー!!」 変なノリやったけど将斗の箸で掴まれた肉を口の中に入れた。あー、美味い。疲れも取れていく。 「無理して書くのはダメですよ」 「え?」 急に将斗がそんな事を言い出して、驚いて顔を上げる。 「健人さんが楽しく書ける話、書いてください。」 将斗が優しく笑う。それが···なぜか梓と重なった。 「前作は切なかったけど、楽しそうな文字を選んでたから。切ない中に楽しさがあったんだなぁって」 ああもう、何でそんな全部わかるん。 梓とのことは確かに、切なくてたまらんかったけど、楽しかったんも確か。 「将斗、なんで···全部わかんの···?」 「健人さんが好きだからですよ。その繊細な心。ずっと健人さんの本を読んできたから、きっとそういう人なんだろうなって思ってた。全部、本の中に並ぶ文字に現れてます」 「······ほんま、俺、年上やのにダサいなぁ」 肉を食べて、自虐気味に笑う。 すると、将斗がまた口を開いた。 「ねえ、俺の告白、無視しないで」 「え、こくは···く······?」 「好きです。それに健人さんはダサくなんてないよ。凄く素敵な人。」 机に置いていた手に、そっと俺よりも少し大きな手が重なる。 「好きなんです。あの本の女の子みたいに、健人さんの心を揺さぶること、俺にはできませんかね。」 「······ま、将斗、落ち着いて」 「俺は、健人さんから離れません。ずっとそばに居ます。」 将斗に惹かれたあかんって、頭の中ではわかってる。だって相手は高校生。これからいくらでも出会いがあって、彼女もできて、幸せな未来像が想像できるのに。 「将斗、俺は男やで」 「健人さんはそんなこと、気にする人じゃないでしょ。」 「···っ、それもお見通しなんか」 「ついでに言えば、健人さんが俺に惹かれてるってのもわかります。だって···顔真っ赤。手だって離させようとしない」 ほんまやったら自意識過剰か!って言ってやりたい。でもその言葉はドンピシャやったから、否定出来やん。 「······そんなわかりやすいかなぁ。」 「いや、わかりにくいです。」 「やのに、将斗にはわかんの?」 「愛の力で」 「ブッ!!」 あかん、おもろい。 思わずケラケラ笑ってもうて、勝手に出てきた涙を拭う。 「うん。俺も、好きやよ」 「···付き合ってくれますか?」 「こんな情けない俺でよければ。」 そういうと、将斗は急に立ち上がって俺の隣に座る。それからキスをされた。 「っ!い、今肉食ってたのに!」 「嬉しい···大好きです、健人さん。······あ、言っておきますけど健人さんは情けなくなんかないですよ」 髪を撫でられて、抱きしめられる。 あの日から冷えていた心が温かくなった。 「な、なあ。もう···恥ずかしいし、肉も出来たから食べよ···?」 「はい!」 ドキドキする鼓動が抑えられへんくて、多分まだ真っ赤な顔を両手で隠した。

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