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第7話「愛玩少年」

 初めて発情を体験したS4(エスフォー)を、翌日も研究員達が数名、実験と称して彼の体を弄んだ。 「中、ヒクついてるけど、これってイッてるんだよな?」 「そう。ドライでずっとイキッぱなしの筈だよ。」 「…射精はまだ未経験なのにな。」  代わる代わる研究員の男達は、S4の中に精を注いでいく。  S4の体の味を知ったネスビットは、その日の夜に更にゆっくり堪能しようと、IT担当のビーズリーに相談を持ち掛けた。  監視カメラを通して研究棟全域を監視している人工知能のダイアナに、手製のマルウェアを仕込んで挑んだビーズリーは、早々に駆除されてしまった為、今度は監視カメラに録画データをすり替えるという手段に出た。  S4を早目に就寝させるというスケジュールをS4担当であるウィルに作らせて、寝室で眠るS4の映像記録を利用する。そして、数十分の無人の廊下の画像を流す間に、S4の生活区画である居住区から、通常ならグレイソンの許可がいる研究区画へS4を連れ出すと、目的地である通信手段の絶たれた唯一の部屋である備品庫に入った。  ネスビット達は、部屋の隅にある清潔とは言えないマットレスを端の通路に敷き、白い病衣を一枚着ただけのS4を全裸にした。 「S4、これから君の体を検査してあげるよ。気持ちい検査だから、怖くないよね?」  ネスビットに言われるままにS4は素直に頷く。雄が体を求めてくれば、きっと逆らえないプログラムが組み込まれているのだろう。 「口でする事も教えてやろう。」  ビーズリーが自身のイチモツを出してみせると、S4を跪かせて口に含むように指示した。 「舌を使って…裏側を嘗めるんだ。…そう、舌に力を入れて…。」  従順に舌でビーズリーのものを愛撫するS4の臀部の粘膜を、デニスが初めて参加しているマークルに見せるように拡げて見せた。  マークルはこの研究棟で性欲処理用の少女タイプを担当している。デニスが担当しているトロイベースという青年タイプには興味を持てない彼は、少し引き気味になっているようだった。 「確かにトロイベースの見た目は綺麗だから興奮はするけど、俺は…やっぱり口だけでいいかな…。」 「駄目だよ、マークル。…S4を試せるのは今だけなんだから。…多分、君は三分と持たないよ。」 「三分だって?わかったよ、それじゃあ…。」  ベルトを外しに掛かったマークルだったが、それより先にビーズリーがS4を回転させて後ろを犯し始めた。 「まだ、俺だって。…直ぐ、終わるから待ってろ。」  此処では早く達しても恥ではないという連帯感が生まれていた。 「…あぁっ!…あっ…あっ…中に…出して…。」  S4の痴態に引き込まれたマークルは興奮を隠せないまま、ビーズリーが終わるのを待ち望んだ。 「まるで発情した雌猫みたいだな。」  この研究棟の統括であるネスビットは、少し離れた位置でタブレットを操作し、改めてS4のデータを見ていた。 「ああ、確か、グレイソンの要望で、雌猫の遺伝子が組み込まれていた筈だよ。動体視力、暗視、聴力、嗅覚、俊敏性は猫と同等だっただろう?」  デニスが記憶している事を改めて解説する。  二人が会話している間に太ったマークルがS4へ覆い被さった。 「おい、マークル。S4を潰すんじゃないぞ。」 「…ああ~簡単に入っちゃった。」 「苦し…!」  デニスが心配した通り、S4は圧迫されて快感を半減させているようだった。デニスがマークルに手を伸ばした時、ネスビットがそれを制止した。 「待てよ。マークルの腹の肉がS4の前を擦っている。…初射精するかもだぞ。」  そこで一同見守る方向になったが、それから一分掛からない内にマークルは達してしまった。 「おいおい、何やってるんだよ。」 「仕方ないだろ!…こんな熱くて吸い付かれたら、誰だって持たないよ。」 「まあ、いいじゃないか。これから二週目もいけるだろう?」  デニスとビーズリーが責め立てる中、ネスビットが寛容さを見せ、S4の体を引き寄せた。 「…実験は、まだまだ終われないな。」  そして翌日も同じ時間に、同じメンバーの元、実験と称されたS4への性行為は続けられていた。  ネスビットがS4の胸に舌を這わせると、ここでも感度の良さをS4は示してくる。 「気持ちいい?」 「いい…。下の方も…疼いて…。あ…あぁ…!」  ネスビットが下で執拗にS4の乳首を攻め立てると、やがてS4の膨張したものから精液が放たれた。 「ここが…スイッチだったのかな?」 「分かりま…せん…。」 「出ちゃったけど、気持ちいいの…まだ、終わらないよね?」  苦しそうにS4は頷く。 「中に…欲しい…です…。」 「そう、じゃあ、ゆっくり挿入してあげようか。」  S4への吐精が二週した処で、漸く男達は彼を解放する事にした。 「グレイソンに報告したら泣いて喜ぶんじゃないのか?」 「まだ報告したくないな。俺達にだって楽しむ権利はある。そうだろう?」 「…八人分の精液を余裕で吸収するなんてな。発情させてしまえば、前戯も後始末もいらない。手放すのは惜しまれるな。」  マークル、デニス、ビーズリーの会話を聞きながら、S4は冷静になった頭で病衣を来て、部屋に戻る事を考えていた。 「グレイソンは次、いつ来る?」  デニスの問いに、S4は少しだけピクリとする。 「予定では五日後だ。…今はT-CC283が彼の相手をしてるから、異変がない限り、早めに来る事はないだろう。」  ネスビットが答えると、マークルが担当であるデニスに質問する。 「消耗品の方のトロイベースは今、一ヵ月くらいもつの?」 「おまえのとこの少女タイプと基本は同じだよ。薬剤投与のメンテ有りで約三ヵ月の寿命ってとこだ。」  その時、ビーズリーのスマートウォッチからアラーム音が響いた。   「よし、おまえら、お喋りしてないで速やかに此処を出るぞ。」  ビーズリーは来た時と同様の環境になるように、自動的に監視カメラに細工をしていた。 「さあ、S4。部屋に戻ろうね。」  デニスに肩を抱かれ、S4は拒絶したくなるのを堪えた。発情が終われば、S4に残るのは罪悪感と嫌悪感しかなく、一度受け入れた筈だったのに、と彼は心裡で自嘲する。そして、シルビーに貰った手紙の文字を思い出して、気持ちを切り換えた。 ――木曜日、外部の人間が来る。  それは明日の事だった。明日になれば、きっと此処から抜け出す事が出来るのだと、S4は希望に縋った。  研究棟から少し離れた場所に建つ寄宿舎のシルビー・ザナージの部屋で、ウィル・バーネットは涙を流していた。  対して彼と向き合った形のシルビーは、怒りの籠った瞳で彼を見つめている。その手にはメモ用紙が握り締められていた。  ウィルは昨日S4の身に起こった事と、現在S4が受けているであろう行為の事を、極小の文字で小さなメモ用紙に書き綴り、監視カメラの死角で読むようにシルビーに渡した。その時点で涙を浮かべていたウィルは、シルビーの爆発しそうな怒りの感情を感じて、堪えきれず泣き出してしまった。 「こんな事、許されない…!」 「ザナージさん、すみません…。」 「泣くのは簡単な事よね?」  シルビーの放った一言に、ウィルは必死で泣くのを堪える努力をした。 「明日、彼らには制裁を受けて貰う。」 「制裁…?」  シルビーは視線を監視カメラに向けて、そちらに声を発した。 「そう。ネスビット、ビーズリー、デニス、マークル。この四人の動向に注意が必要だったわね、ダイアナ。明日、彼らがあなたの目を欺いた方法を教えてあげる。…今じゃないの。明日まで待ちなさい。」  そういうと、シルビーは冷ややかな笑みを浮かべた。ダイアナが了承してくれたようだった。ウィルは初めて監視者である人工知能と交渉が出来る事を知って、驚きを隠せずにいた。 「明日…なんですね?」  シルビーは軽く頷くと、日本語を走り書きしたメモをウィルに渡し、明日、S4へ渡すように囁いた。ウィルは詳しい説明が聞けないまま、仕方なく彼女の部屋を後にした。

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