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第2話

帰り道、なんとなくまっすぐ家に帰る気になれなくて、河原の駐車場に車を停めた。 土手に座って、ずっと吸えなかった煙草をぼんやりとくゆらせていると、子供たちの元気な声が聞こえてきた。 見ると、河原のサッカー場でサッカーをしている。 ……そういや昔は、俺もあんなふうに遊んでたなー。 煙草を消し、立ち上がると俺は、子供たちの方へと歩いていった。 「ほんとになにやってたんですか、まったく」 「……いいだろ、別に」 少し怒っている敬一を無視して靴を脱ぐと、ようやく踵の痛みから少し解放された。 ――幼馴染みの敬一は、俺の秘書をしている。 さらには片付けをしない俺のために、ハウスキーパー的なことまで。 合い鍵は渡してあるので、休日の今日、うちにいたってなんの不思議はない。 リビングでウォーターサーバーから水を汲みかけてやめる。 キッチンに行き冷蔵庫を開け、中からビールを取りだしたところで敬一からひったくられた。 「……なんだよ」 「足、見せてください、足!」 完全に敬一は怒っているが、……その格好で怒られてもあまり凄みはない。 ……なぜなら。 奴の格好は休日だというのにワイシャツネクタイ、その上にさらに、ひらひらのメイドエプロン。 敬一が俺の、ハウスキーパー的なことまでやっていること知った共通の友人から、ギャグとしてプレゼントされたものだが、なぜか敬一は愛用している。 しかもこれが、無駄に似合ってるもんだからたちが悪い。 「……足がどうかしたのか?」 「隠せるとでも思っているんですか?」 ブリッジを人差し指で押し上げると、キラリ、敬一の銀縁眼鏡が光った。 ……そーですね。 おまえに隠し事したって無駄ですもんね。

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