21 / 22

before

この選択を間違えたとは微塵も思ってない。 彼と一緒に居たかった。 勝てるはずがない。 社会的にも本能的にも強い彼に。 けれど、奪われるのだけは、手の届かない場所に連れて行かれるのは耐えられなかった。 _____ 鈴と番契約をした数日後突然賽子は投げられた。 「今日の交渉はお前が行ってくれ。」 父が渋い顔をしながら俺に言う。 「はい。」 父はこの会社の社長。そして俺はそれに仕える部下だ。Noと言えるわけがない。 最近、我社の経営を邪魔してくる企業があり、経営不振となってしまっている。 しかし、何を思っているのか相手会社が交渉を持ち掛けてきた。 俺が出向く事が条件として。 何故自分なのか。その謎はあっさり解ける事になる。 「武内…。」 指定された場所に行くと絶対支配者の鈴の運命がいた。 「そんな怖い顔しないでよ。まずは座って。これじゃあ話も出来ない。」 俺は渋々席につく。 武内は我社の邪魔を幾度となくしてきた会社の社長だった。 その会社は有名で、酷い跡目争いが行われたらしい。一時期、週刊誌が騒いでいた。 蹴落とし、蹴落とされ、最後に頂点に立ったのがこの男だ。 「君が、この交渉を飲んだら邪魔をするのを止めるよ。なんなら、和平でも結ぶかい?」 ニコニコと話し始める。 正直、気味が悪かった。 「交渉は2つ。1つ目は君が我社に入ること。僕の部下になってもらう。安心して、上の地位を約束する。」 こいつの部下…、しかし、犠牲で守れるのなら…。 「それともう1つ。……鈴との契約を解除しろ。」 その言葉は、とてつもない威圧を含んだ。 有無を言わさない。 気づけば俺は「はい」と自ら言ってしまった。 「っ!!今のは………無しだ!」 「本当に無効にしていいのか?お前の父も、母もお前達の部下も仕事を失い、社会的に抹殺してやる。のたれ死ぬことになるぞ?それに、お前も。今後一切、鈴には会えないだろうな?」 こいつ、何を言っている? 「俺が叩き潰すからだよ。我社は表だけじゃないんだよ。裏にもでっかいパイプがあるんだ。だからここまで大きくなれたんだが。」 更に威圧を強くする。 本気で俺達の未来を潰そうとしている。 「お前たちを裏へよこして、俺は鈴と2人だけで生活する。番の跡は手術で取り除けばいい。苦痛だろうが、我慢してもらうしかないな。これでも、俺は譲歩しているぞ?運命の番を取られた相手に対して、契約を解除すれば一緒に生活することを許してやるんだから。さぁ、選べ!!」 その時、おれは、 _____ おれは鈴のペット。 それだけで十分だ。 家族や部下を守れ、俺も鈴のそばに居れる。 これ程円満に行くなんて驚きだ。 癪だがアイツに感謝するくらいだ。 俺は、シュウは鈴のペット。 それは一生変わることはない。 俺は鈴という鎖に繋がれ、身動きを取ることができない。 いや、取ろうとは思わないな。 鈴がいるから。 俺の愛しいお姫様……、ご主人さま。 この甘い鎖にいつまでも繋がれていたいから。

ともだちにシェアしよう!