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before
この選択を間違えたとは微塵も思ってない。
彼と一緒に居たかった。
勝てるはずがない。
社会的にも本能的にも強い彼に。
けれど、奪われるのだけは、手の届かない場所に連れて行かれるのは耐えられなかった。
_____
鈴と番契約をした数日後突然賽子は投げられた。
「今日の交渉はお前が行ってくれ。」
父が渋い顔をしながら俺に言う。
「はい。」
父はこの会社の社長。そして俺はそれに仕える部下だ。Noと言えるわけがない。
最近、我社の経営を邪魔してくる企業があり、経営不振となってしまっている。
しかし、何を思っているのか相手会社が交渉を持ち掛けてきた。
俺が出向く事が条件として。
何故自分なのか。その謎はあっさり解ける事になる。
「武内…。」
指定された場所に行くと絶対支配者の鈴の運命がいた。
「そんな怖い顔しないでよ。まずは座って。これじゃあ話も出来ない。」
俺は渋々席につく。
武内は我社の邪魔を幾度となくしてきた会社の社長だった。
その会社は有名で、酷い跡目争いが行われたらしい。一時期、週刊誌が騒いでいた。
蹴落とし、蹴落とされ、最後に頂点に立ったのがこの男だ。
「君が、この交渉を飲んだら邪魔をするのを止めるよ。なんなら、和平でも結ぶかい?」
ニコニコと話し始める。
正直、気味が悪かった。
「交渉は2つ。1つ目は君が我社に入ること。僕の部下になってもらう。安心して、上の地位を約束する。」
こいつの部下…、しかし、犠牲で守れるのなら…。
「それともう1つ。……鈴との契約を解除しろ。」
その言葉は、とてつもない威圧を含んだ。
有無を言わさない。
気づけば俺は「はい」と自ら言ってしまった。
「っ!!今のは………無しだ!」
「本当に無効にしていいのか?お前の父も、母もお前達の部下も仕事を失い、社会的に抹殺してやる。のたれ死ぬことになるぞ?それに、お前も。今後一切、鈴には会えないだろうな?」
こいつ、何を言っている?
「俺が叩き潰すからだよ。我社は表だけじゃないんだよ。裏にもでっかいパイプがあるんだ。だからここまで大きくなれたんだが。」
更に威圧を強くする。
本気で俺達の未来を潰そうとしている。
「お前たちを裏へよこして、俺は鈴と2人だけで生活する。番の跡は手術で取り除けばいい。苦痛だろうが、我慢してもらうしかないな。これでも、俺は譲歩しているぞ?運命の番を取られた相手に対して、契約を解除すれば一緒に生活することを許してやるんだから。さぁ、選べ!!」
その時、おれは、
_____
おれは鈴のペット。
それだけで十分だ。
家族や部下を守れ、俺も鈴のそばに居れる。
これ程円満に行くなんて驚きだ。
癪だがアイツに感謝するくらいだ。
俺は、シュウは鈴のペット。
それは一生変わることはない。
俺は鈴という鎖に繋がれ、身動きを取ることができない。
いや、取ろうとは思わないな。
鈴がいるから。
俺の愛しいお姫様……、ご主人さま。
この甘い鎖にいつまでも繋がれていたいから。
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