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第5話
「違う。こいつは俺のだ。」
そんなことはどうでもいいのだ。
手を外して。
彼が見たい。見たい。みたい。みたい!
「秀。手、外して?」
咄嗟に甘えた声を出す。
「絶対に嫌!」
秀の叫びが耳元で聞こえる。
うるさい。
いつもならそんなこと思わないはずなのに、鈴は焦りを感じていた。
鈴は目元にある手をはぎ取ろうとするが、力の差がありすぎて剥がれない。
「手、どかしてあげなよ。もしかして、自信がないの?」
「っ!違っ!!」
彼の言葉に返すことができなかったからなのか渋々、秀は手をどかす。
「初めまして…なんだよね。僕の名前は、武内 慎 です。」
「古川 鈴 です。」
よろしくと彼、慎は握手を求めてくる。
その手を取ろうとしたが、秀に遮られてしまい、握手することは出来なかった。
「もういいだろ。行くぞ。」
秀は鈴の腕を掴み、慎から距離をとっていく。
慎のそばにいたい。本能が叫んだ。
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