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第3話

「今日もヒデくんとこ行かないの?」 「ん…なんか体ダルいし、寝る」 今までは休みの度に入り浸っていた隣家に行かなくなった雄介を不思議に思いながらも、母親が昼食の後片付けをしていく。 三年生は来週末の卒業式の日に学校へ行くだけで、特にバイトもしていない雄介は、どこへ出掛けるでもなくずっと家にいた。母親の言う通り、暇さえあればすぐに秀彦の部屋に押し掛けていたので、それ以外にする事がない。特に先日その張本人に嫌われてしまったとなれば、もしも家の外で偶然にも出会した時にどんな顔をすればいいのか、考えれば考えただけ頭が痛くなってきた。 「ぅあ…頭痛え…」 「え、ちょっと…熱あるんじゃない?」 思考の追い付かない頭では、何を考えても何も浮かばない。諦めて部屋に戻ろうと椅子から立ち上がった瞬間、足の力が抜けた。 ガタン!と派手な音を立てて床に崩れ落ちる。遠くで名前を呼ぶ母親の声と共に、一番聞きたかった声が聞こえた気がした。 「ヒデくん!?どうして…」 「そんなんいいから!ドア開けて!」 くたりと体の力の抜けた雄介を抱き上げて部屋に向かい、ゆっくりとベッドへ横たえる。すぐに雄介の母親が氷枕を持って来て、その後頭部に差し入れた。 着ていたパーカーのジッパーを下ろして腕を抜き、靴下も手際良く脱がせていく。胸元まで布団を掛けてやったところで、ふう、と息を吐いた。 「ありがとね、ヒデくん。雄介に何か用だったのよね?」 「あ、うん。ちょっと渡すものあってさ…」 「そうなの?あ、おばさん今から仕事なんだけど、雄ちゃん頼んでいい?」 「わかった、任せて」 近所の小児科で看護師として働いている雄介の母親は、夕方からの診察に合わせて出勤するところだった。最近特に流行しているインフルエンザの患者が多く、雄介も恐らくそうなのだろうと予想する。 指を折って何かを数える仕草を、秀彦が不思議そうに見ていた。 「全く…卒業式にはギリギリセーフかしらね」 「夕方くらいにおばさんとこの病院連れてこうか?」 「ほんと?助かるわ」 着替えここに置いとくから、と言い残し出勤して行ったその背中を見送って、雄介の傍に腰掛ける。汗で頬に貼り付いた髪を払ってやると、そのまま首筋に掌を這わせた。 まるで風呂上がりのように熱い肌に触れると、うっすらと雄介の瞳が開く。ぼーっとしながら視線を彷徨わせていると、漸く秀彦に気付いたようだった。 「…ひで、ひこぉ?」 「ん、ここにいる」 「…あれぇ、じゃあこれ夢か…」 湿った髪を梳く秀彦の手を取り、頬を擦り寄せる。熱い掌を重ねると、きゅっと指を絡めた。 熱のせいか潤んだ瞳でじっと秀彦を見つめていたが、不意にぼろぼろとそこから涙が零れ落ちていく。 「雄介!?どっか痛いのか?」 「ひっ、でひこは、オレの事…もう、好きじゃねえの?」 切なげに吐息と涙を零しながらそう聞いてくる姿が、不謹慎にも可愛いと思ってしまう秀彦。必死で何かに耐えて「そんな事ない」と答えようとした時、ついに理性が決壊してしまった。 「オレは、秀彦のこと…すっげえ大好きなのに…っ!」

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