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第14話

「仕方ねーな、連れて帰るか……」 楓はコンビニで買ったビニール傘を諦め、省吾の腕を自分の肩にしっかりと回したところで、一歩一歩ゆっくりと踏み出す。 脱力した人間の身体は重いと聞いたことがあるが、まったくもってその通りだと思った。 ただ、救いがあるとすれば、省吾の身長が楓よりも低く、体重もさして重いと感じないので、比較的スムーズに引きずって歩けるという点だ。 ひたすらマンションを目指す。 雨で視界が悪いが、一番気掛かりなのは、省吾の体調だった。 服越しに触れているだけでも熱いと感じるのだから、高熱を発しているのかもしれない。 楓が省吾を連れ帰ったのは午後11時、2人とも頭からつま先までびしょ濡れ状態だった。 まあ傘もささずに意識を失った成人男子を徒歩で連れ帰ったのだから、当然と言えば当然だ。 楓はとりあえず先に上がり込んで濡れたスーツを脱ぎ、バスタオルで髪を拭いながら玄関先の省吾の元に歩み寄る。 さて、どうしたものか。 幾分顔を赤くして息を荒げているところを見る限り、まず間違いなく発熱しているはずだ。 仕方がないので自室から体温計を持ってきて、省吾の口に差し込んでみた。 30秒ほど待つとピピッという音が聞こえ、体温計を取り出して液晶を確認する。 「げ……39度って……マジかよ……」 とにかく急いで服を脱がせ、暖かい場所に寝かせなければならない。 楓はかぶっていたバスタオルで省吾の髪や顔など、服から露出した部分を拭ってやるが、服に覆われた部分までは拭えない。 分かっていたことではあるが、どうやら着替えさせてやらなければならないようだ。 楓は仕方なく自分が寝る時に着ているスウェットをベッドの上から持って来ると、省吾のトレーナーを脱がせた。 その瞬間、ドクン──、と鼓動が高鳴る。 妖しいほどに白くて艶めかしい肌に、華奢な身体つきだったからだ。 「な、何考えてんだ、俺……」 邪念が芽生えてしまうほどの艶っぽさに、楓はぶんぶんと首を横に振る。 次は下半身だ。 ジーンズのホックを外し、ジッパーを引き下げ、肌に張り付いたそれを脱がせる。 だが濡れているのはジーパンのみだけではなく、その下に着けていたボクサーパンツもだった。 「し、下着まで替えててやんのか、俺……?」 下半身の白さにまたもや視線が奪われているというのに、下着まで脱がせてしまったらどうなるのだろう。 だがそんなことを考えている間に、省吾の熱が上がってしまっても困るばかりだった。

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