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第19話
「ホントは、坐薬だけ入れておしまいにしようと思ってた……けど、お前の身体、超エロくて……なんで欲しくなったのかって考えたらさ、きっと好きだからなんだろうって思った」
「……そうか」
「そうだ」
もうどうでもいい。
せいぜい満足するまで、好き勝手に腰を振っていればいい。
それは峰島も同じだった。
省吾が何度達しようと、自分が達するまで腰を振り続け、白濁を腹の中に流し込んでくる。
そんな傲慢な人を、どうして好きになったのだろう。
何度も別れたいと伝えようとしたのに、組み敷かれる度に言い出せなくなって、結局ズルズルと関係を引きずってしまった。
そして、ある日突然省吾の前から消えてしまった。
「──ッ!?」
唐突に、怖いと思った。
万に一つの可能性もないが、仮に省吾が楓を好きになったら、楓はちゃんと生きていてくれるのだろうか。
それとも峰島と同じように、手の届かない世界の住人となってしまうのだろうか。
もしそんなことになったりしたら、省吾は立ち直れるのだろうか。
もう置いて行かれるのは嫌だ。
一人で膝を抱えて泣きじゃくり、大学にも行けなくなって実家を追い出され、野良犬のようにあちこちを彷徨って、ようやく今の生活に落ち着いた。
もし楓を好きになってしまったら、生きている可能性があるのかと訝ってしまうのは、間違いなく峰島が原因だ。
「あ、んっ、んぅ……」
宙送が段々激しくなってきた。
省吾の陰茎も少しではあるが硬くなってきている。
高熱を発した状態では達することなどできそうにないが、いつまで揺さぶられれば眠らせてもらえるのだろう。
「ん……もう限界……出すぞ──っ!」
物凄い勢いで肉棒が後孔から引き抜かれ、省吾の下腹部に白濁がかけられた。
それは今まで感じたことのない、不思議な感覚だった。
どうして楓はナカに出さなかったのだろう。
「はぁ……熱あんのに付き合わせて悪かった。今日は1回で我慢しといてやる」
楓はベッドサイドに置いたティッシュを何枚か引き抜き、省吾の腹の上の精液を拭うと、下着とズボンを上げてくれた。
その後自分のペニスを拭き取り、丸めたティッシュをゴミ箱に放る。
「なんでだ……?」
「あ?」
「なんで……ナカに出さなかった……?」
「はぁ!?俺だって一応ナカ出しがあんま安全じゃねーって知識くらいあんだよ!」
峰島と楓の相違点。
それは相手のことを本当に考えているかどうかだな、と省吾は思った。
峰島とは合意の上でセックスをしたが、彼は省吾の身体など顧みず、コンドームを着けるのを嫌ってナマでナカ出しを平気で繰り返していた。
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