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第33話

肉棒が上下に擦られる。 包皮がずり下ろされて露わになった亀頭の割れ目が指の腹でなぞられ、裏筋を親指の腹で強くなぞられると、ビクン──、と省吾の身体が跳ねる。 「もういいのか?先生のことは」 楓は、これで峰島の件に触れるのは最後にするからと言い添えながら、省吾に問いかけた。 「アンタの上書きはとっくに終わってる……」 「あのパスケース、どうすんだ?」 「ッ……んッ……捨てた」 「は……?」 聞き間違いだろうか、今「捨てた」と聞こえたような気がする。 突然動きを止めた楓を訝って省吾が閉じていた瞼を押し上げると、「そんなまさか」とでも言いたそうな楓の表情を見つめ、微笑した。 「火が回ってきた時、なんで逃げなかったのかって聞いたよな?」 「ああ……」 「パスケースを捨てなきゃって思って、それを火に投げ入れた……そしたら本棚が傾いてきて……身動きが取れなくなって……逃げ遅れた」 あのまま死んでもいいと思ったことも事実だが、パスケースをどこへ捨てようかと迷っていたのもまた事実だった。 だから無傷で救出された省吾は、本当に強運に恵まれていたということになる。 「バーカ……結果的に生きてたからよかったけど、死なれてたら、俺は……」 「楓さんは、俺じゃないとだめなんだな」 「当たり前だ……指輪自慢までしてきたんだ、逃がすかよ」 楓は強くそう言ったところで、省吾の薄い胸板の上にある小さな突起に口付けた。 普段は隠れているそれが、舌先で転がす度に尖りを帯びてくる。 薄桃色だった乳首が、紅を帯びてくる様も実に妖艶だ。 もう片方の乳首は、手で愛撫してやる。 「あ……ッ……」 「感じる?」 「ん……でも、俺ばっかり……」 「心配すんな、終わればイーブンになる」 それもそうかと、省吾は楓の愛撫に身を任せることにした。 この人の抱き方は、どこまでも優しい。 無理に後孔をこじ開けるようなことは絶対にしないし、ちゃんと省吾を絶頂に導いてから本格的に行為に及ぼうとする。 こんな風に抱いてもらえる日がくるなんて、夢じゃないだろうか。 好きな人がゼロ距離の位置にいて、身体中を愛してくれて、省吾も彼の全てを愛している。 そんなことを考えていると、いつしか後孔に入った指が前立腺を強く擦り、同時に亀頭を責められて、省吾の内腿が軽い痙攣に見舞われるようになった。 「あぁッ……か、えでさん……、もう……イきそう」 視界が白くスパークするような感覚に陥ったかと思えば、性器から精液が迸って自分の腹の上に吐き出された。

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