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第2話

「はじめまして、羽月 圭一郎(うづき けいいちろう)です。専門教科は国語。年は25、よろしくお願いします」 まだ残暑が残る夏休み明けの9月、産休に入った教員の代わりに産休代替教員として俺はこの高校に来て、3年を受け持つことになった。 大学の時になんとなく教員免許を取得して、当時将来の夢なんて全く考えてなかった俺はそのままなんとなく教師になった。 性格も普通なら顔だって普通、何かがずば抜けているわけではない。 学生時代は真面目過ぎて面白くない人だと散々言われてきた。 そんな何もかも“普通”の俺がこの名門と言われる私立校に配属だなんて、少しだけ気が重かった。 「では、早速だが出席を取る」 名門だけあってここは男女共学の付属高校で、比較的他の高校よりは大学に進みやすい。 だから3年だというのに受験のピリピリした空気はそれほど感じず、こうして一人一人名前を呼びながら名簿と照らし合わせている今も比較的穏やかな空気が流れていた。 「じゃあ、次……」 次々と手元の名簿に視線を落とし、名前を呼びながら顔と名前を確認していく。 その機械的作業を繰り返し、ある生徒に差し掛かった時もそれは変わらなかった。 「瀬戸内 奏多(せとうち かなた)」 他の生徒と同じように名前を呼び、視線を上げ、顔と名前を確認する。 「はい」 すると名前を呼ばれたその生徒が短く返事をして俺と視線が合った。 ……と、その次の瞬間、一瞬で血の気が引いた。 なんで…… 頭の中が一気に真っ白になって、その三文字だけがただ脳内を駆け巡る。 カナタ…… その顔を見た時、 一瞬で一週間前のことが蘇った。

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