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第4話
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赴任初日の放課後、校内を把握するために戸締まりがてら彷徨いて最後に自分の教室へと戻ってきた。
そこで俺を待っていたのはカナタ……いや、瀬戸内だった。
「ケイちゃん、先生だったんだね」
「……お前、その呼び方やめろ」
なるべく動揺を悟られないように視線を外しながら会話を続ける。
「それに、こんな遅くまで何やってるんだ」
「ケイちゃん待っていた……て言ったら?」
教壇の真正面の机に行儀悪く腰掛けていた瀬戸内が、そう言いながらだるそうに腰を上げこっちに歩いてくる。
グレーのブレザーに深緑のネクタイ、緑基調のチェックのパンツ姿は一週間前と違い、どこをどうみてもごく普通の高校生だ。
それに今日一日で分かったこと、それは瀬戸内は女子からかなり人気がある。
親しみやすい爽やかな顔立ちと笑うと出る笑窪。
物腰柔らかい話し方にきっと女子には相当モテるはず。
そんな人気者のこいつが何故俺に再び関わろうとするのか。
「だから────」
「羽月先生……それならいい?」
そのまま目の前まで来たとこで話を遮るようにそう言ってきた。
「いいけど……あと敬語もちゃんと使いなさい」
「なんで?」
「生徒と先生なんだから当たり前だろ」
一週間前に初めて会った時は第一声からタメ口だった。
お互い正確な歳も知らないままだったし、別に気にもしてなかったからそれでも問題なかったが、こうして生徒と教師という枠に囚われた今、そういうわけにはいかない。
「わかった。でも、2人きりの時は敬語は使わない……あとエッチする時も」
「おまっ……とりあえず、あれは忘れて欲しい。俺もどうかしてた、だからもうお前とそういうことはしない」
それと、1回はこいつと身体を重ねてしまった。けど、素性が分かってしまった今は二度としてはいけないことだ。
ましてや、名門高の生徒なら尚更。
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