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第6話

それから俺たちの秘密の関係が始まった。 昼間は真面目な教師と爽やかで人気者な生徒。 放課後は──── 「………あッ……んんッ」 「……ッ……もっと尻突き出せよ、もっと気持ちいいの欲しいんだろ?」 快楽に弱いただの冴えない教師と黒い裏の顔を持つ生意気な生徒。 俺が日頃いる準備室に押しかけて来てはこうして何度も身体を求められた。 それが悪いことだと分かっているのに拒めない一番の理由は、やっぱりあれだ。 「ふふっ……そんなに俺の顔好き?」 「ちっ違うッ」 元恋人を忘れることが出来ない俺はその心の隙間をこいつで埋めてしまっているということ。 ……笑うと窪む笑窪まで一緒とかほんと勘弁して欲しい。 「あのさ、もう知っていると思うけど、俺モテるから女には困らない。けど、ケイちゃんは別なんだよね……なんか別腹って感じ」 「あっそ……ッ……遊びだから気楽なんだろ……」 「あぁ、そうかも。ちょうどいいんだよね……つか、そろそろ出すよッ……」 「……ちょッ……いきなり……激しくッ……すん……な……ッ」 まさか忘れなられない元恋人を思い浮かべながら抱かれてるなんてこいつは思ってもないと思う。 けど、瀬戸内にとって俺は、女を相手する気休め程度にしか思ってないのだからこっちにとっても好都合だ。 「ケイちゃん……イ……く……ッ」 「……あぁッ……ああぁッ……!」 いずれこいつは卒業してこの関係も終わる。俺はその時、元恋人をきっぱり忘れようと決めた。 逆を言えば、卒業までは忘れなくていい。 そう無理矢理自分自身と折り合いをつけたことで不思議と気持ちは落ち着いた。 それまでは、偽り続けたまま割り切った遊びの関係と思えばいい。 こいつはそれだけの存在…… あの人の代わりでしかないのだから──── と、体内に流れ込む熱を感じながら秘かに思った。

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