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第10話
あれから瀬戸内は学校に一切来ていない。
スマホに掛けても相変わらず電源は入ってないし、瀬戸内の家に掛けても誰も出ない。
留学先にも問い合わせしたけど来てないと言われるし、あとは父親の転勤先に……とも思いつつもそこまでするのもなって思い止まった。
クラスの女子からもどこにいるんだと質問攻めにあう始末。
俺が逆に知りてーよ……
ほんと、なんなんだよ……
それから何回かLINEを送ったけど既読になることはなく、いくら考えても黙っていなくなる理由が分からなかった。
それから、瀬戸内がいない毎日が数日過ぎ、気付くとあいつの事を考えていることが日に日に増え、自分でも重症なんじゃないと思い始めたのはあいつと初めて出会った場所に足を運んでしまった時だ。
ネオンが煌めく繁華街は、あの日と変わらず賑やかで、あてもなく歩く俺には全てが雑音に聞こえた。
まいったなぁ……
ぽつりと吐き出した予想以上に弱々しい自分の声。
そのままスマホを取り出し、既読にならない画面を眺めているととてつもなく胸が苦しくて、明るい夜の空を見上げため息を吐き出した。
そしてその次の日、一度だけ瀬戸内からLINEが届いた。
『卒業式は出ます』
そこにはたった一行、それだけが記されていた……
*
卒業式当日、俺は人生で一番じゃないかってくらい緊張していた。
卒業式がじゃない……約束通りあいつが来るかどうか、それが緊張の一番の理由。
そしてなるべく平常心を装い、いつも通りに教室のドアを開け中に入ると一番にその席へと視線を向けた────
─────
────────
式終了後の最後のホームルームも終わり、卒業したクラス全員を送り出した俺はいつもいる準備室へと向かう。
そしてドアを開け中に入ると……
「女子たちはいいのかよ」
「これでもクラス全員の女子と写真撮ったり色々相手してきたんだぜ、めんどくさかったけど」
「相変わらず腹黒いな」
「久しぶりに会ったのにその言い方酷くないか?」
俺のデスクに腰掛け、いつもと変わらない瀬戸内がそこにいた。
「とりあえず卒業おめでとう」
「ありがとう」
「で、俺に何か言うことあるよな?」
後ろ手にドアを閉め、ゆっくりと歩み寄ると瀬戸内も重い腰を上げ俺に歩み寄ってきた。
「急に消えてごめん」
「あとは?」
「留学のことも黙っててごめん」
「何で俺の前から消えた」
「……耐えられなくなったから」
「は?」
「この関係が……」
卒業までと言い出したのはこいつなのに、今更なんでそんなことを……
「お前が言い出したことだろ?それにこの関係も今日で終わるし……何の問題もないだろ」
「違う、そうじゃないんだ」
そして俺の手を取り、あるものを渡された。
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