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第11話

「……これ、指輪……どうして」 「ケイちゃんを助けたあの日、大事そうに薬指につけてたこの指輪を、ケイちゃんは自分から外したんだ。酔ってたから覚えてなさそうだけど」 ふられてからも外せなかった貰った指輪。酔っていたとはいえ、あの日自分から外していたなんて。 しかも、家に帰ってきてから無くなってるのに気付いたけど、酔っていたしどこで無くしか分からなくて結局探すことを諦めてしまっていた。 「それで、外したままテーブルの上に置いてあった指輪をこっそり持ち帰ってしまったんだ」 「おまっ、何故そんなことを」 そして瀬戸内が口にした話の続きに、俺は耳を疑った。 「…兄貴から贈られた指輪だと思ったらから」 「…兄貴?」 「指輪、兄貴から贈られたんだろ?俺、学生時代から2人が付き合ってたの知っていたんだ、弟だから」 「は?!弟?!」 確かに学生時代、家に何度か行ったけど、弟がいたなんて知らなかった。 「でも苗字…違うだろ」 「その後、親が離婚して…だから苗字が違うんだ。それに兄弟って証拠に兄貴と俺の名前にも秘密がある。兄貴の名前は陽加…俺の名前は?」 「奏…多…」 それから続けて読むように促される。 「ハルカ…カナタ…」 「母親が、子供が2人できたらそう付けようと決めてたらしいぜ。国語の先生だからすぐバレると思ったのに気付かなかった?」 「全く…」 まさか、続けて読んで“遥か彼方”になるなんて誰が思うかよ。 「それに、俺と兄貴って双子みたいに顔がそっくりなんだよ…これも同じだし」 そう言って控えめに窪む笑窪を指さした。 「信じてくれた?」 「あ、ああ」 「だから、全部知ってた……ケイちゃんが俺を兄貴と重ねて抱かれていたことも。まだ兄貴を好きなことも……」 なんだそれ 俺バカじゃねーか…… 「じゃあ、だから面白がって俺を…」 「それは違うっ!」 すると、いきなり大声を出したかと思うとすぐに冷静になり、そこから瀬戸内は俺を真正面から捉え、真剣な面持ちで言葉を続けた……

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