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第59話

 死んでいく人間だからと自室に物を置かず、その代わりの様に永絆に与えたマンションの一室には菫が買ってきた家具やインテリア雑貨や絵が飾られ、ただの大学生とは思えないような高価な見た目になった。  自分では選ばない物ばかりの部屋は最初のうちは落ち着かなかったが、今は慣れてどれも愛着があった。 「永絆」  聞き覚えのある声にハッとして振り返る。  黒いスーツに身を包んだ藍が仏花を持って近付いて来て、小さな墓に供えると線香に火をつけ煙を焚いた。 「……知ってたんだね」  ここに藍が来るという事は菫の事を調べられていたという事だ。つまりは「飼われている」と言った嘘も藍にはバレている。 「飼われてるなんて言われて諦めがつく訳ないだろ」  墓前に手を合わせ目を閉じた藍の背中を見つめる。  嘘だと気が付いているかもしれないとは予想していた。調べるかもしれないことも。  嘘と知っていて藍はあの準備室での別れ以来、何も言っては来なかった。 「金で飼われてるならそれ以上を出してやるつもりでいた」  立ち上がった藍は永絆へと振り返り、一歩近付いて来た。 「お金でオレをどうにかするつもりでいたの?」 「それは本気で言ってるのか?」  いつになく声が低く、怒っているようだった。

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