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第63話

「永絆の考えてる事は分かってる。オレの……紫之宮の事があるからだろ? オレがどんなに大丈夫だって言っても周りが放っておいてくれないのも」 「そう、だよ……。藍は家を継ぐんだから……」 「でも、そんな事言ってたらいつまで経っても何も進まない。オレは永絆にもっと触れたいし、いつでも一緒に居たい。言ったろ? 覚悟は出来てるんだ。反対されても永絆以外は考えられない」  あまりにも必死に言うから、永絆は何も言えなくなった。  永絆の肩を掴む手に力が入って指が食い込んで痛い。それだけ真剣なのだと伝わってきて胸が熱くなる。 「オレは今まで欲しいものは全て手に入れてきた。だけど永絆だけは……無理やり手に入れたい訳じゃない。本当は今すぐ掻っ攫って行きたいけど、お前が大切なんだ。二人で納得して一緒に居たいんだ。だから……」  藍の言葉を永絆は途中で遮った。  両手で藍の頬を挟み、爪先立ちになって唇を重ねる事で。  ほんの一瞬のキスに藍は呆然として永絆を見つめた。頬にやった手はそのままに永絆は爪先立ちのまま藍の鼻先にも口付けた。  暫くお互いを見つめあったまま、永絆の頬に藍の手が触れる。その手に擦り寄ると永絆はゆっくり瞼を閉じた。 「言って、藍」 「何を……?」 「オレの事、好きだって言って。運命だからじゃなくて、オレがΩだからでもなくて、永絆だから好きだって。そしたらオレは、それを信じるから」

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