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第74話

*** 「永絆!」  駅前で高校時代の同級生と会う約束をしたのは先週。  お互い別々の大学へ進学したので高校を卒業してからは会う機会がなかなか無かった。  自分の身体や、藍との事、菫の事もあってタイミングも合わなかった。 「藤、久しぶり」 「久しぶりだねー」  藤は高校の三年間同じクラスで、Ωである事を隠していた永絆が唯一その事を打ち明けた親友だ。  爽やかな見た目と物腰の柔らかそうな笑顔。一目見て、優しい性格だとわかる雰囲気を持っている藤は一般家庭育ちのαだった。  αはだいたいが古くから続く一流の家系だが、稀に藤の様に一般家庭から産まれるαもいる。その為か、藤にはαに付き物の傲慢でプライドの高い性格がなく、性別関係なく親しみやすい人間だった。  親に捨てられ菫の世話になっていた永絆は高校時代、荒んでいた。  菫には心配掛けたくなくて高校にはちゃんと通ったし、勉強も人一倍頑張っていたが友人を作る事もなくいつも一人で居た。  菫以外、誰も信用出来なかった。その頃の永絆は両親への恨みや憤りを胸に抱えて生きていた。  そこに現れたのが藤だった。  いつも一人で行動する永絆が気になっていたらしく、何かと声を掛けてきた藤。藤がαだという事は既に周知の事実で、永絆は菫がαの番に捨てられた事を思い出して藤の事も敵視していた。  αは裏切る。番になっても平気で居なくなる。

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