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第77話

「……それはないよ」 「番わないって言われたの?」  頼んだ飲み物が運ばれてきて目の前に置かれる。  アイスコーヒーにストローをさしながら永絆は目を伏せた。 「番いたいって言われた」 「だったら何で?」  藤は自分が頼んだ炭酸飲料を難しい顔をしながら飲んだ。  ストローでグラスの中の氷をつつきながら永絆は言葉を詰まらせた。それを流し込む様にアイスコーヒーを飲む。 「仮に番えても、引き離されるのは目に見えてる。それならこのまま、時間が許す限り一緒に居たい」  番ってしまえば後戻りは出来ない。  引き離されて、菫の様に番を解消されてしまったらきっと耐えられない。  ただ一人、唯一の相手。それを失えば自分も菫と同じ末路を辿る気がしてならない。  永絆以外を抱いたりしないと藍は約束してくれたけれど、紫之宮の力を持ってすれば藍の気持ちなどお構い無しに事を進めるなんて簡単に出来る。  紫之宮という一族は、それほどまでに藍の血を重んじているのだ。 「でも、それってきっと長く一緒に居ればいるほど離れる時辛くなるよ?」  藤の言う事は尤もだ。藍の優しさに甘えて腕の中で安堵に満たされる度に、別れが怖くなる。深みにハマればハマるほど、失う時の哀しみは大きくなる。 「……それでも、オレには藍だけだから……」  きっとこの先、藍以上に想える相手とは出会えない。だから今を一生の思い出にする為に大切に過ごしている。

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