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第80話
藤と別れて藍の部屋に帰ってからも考えは纏まらなかった。
一番正しい道を選んで進みたいのに、何が正しいのかすら分からなくなった。
どれを選んでも誰かを傷付け、困らせる。誰も傷付けない選択肢なんてものがこの世に存在しない事はとっくに知っている。それでも誰も傷付けたくない。
けれどそれは、藤にしてみれば裏切り行為。自分を正当化して現実から逃げているだけなのだ。
ならば感情のままに流されてしまえばいいのか。
例えば次に発情期が来た時に藍に抱いてもらい、番の印を項に刻んで貰えれば正しい道だと言えるのか。
運命の番という意味ではそれが正しい答えで、当たり前の選択。
番になりたいと思っているし、この先もずっと藍と一緒に居たいとも思っている。
藍が家を捨てることなく、Ωである自分を紫之宮家が受け入れてくれたならそれが一番理想的。そんな事は有り得ないのだけれど。
行けるとこまで藍と一緒に行けたならどんなに幸せか。
周りを振り回して沢山迷惑を掛けて、それでも二人でいたいと強く思い合い、周囲の目も気にしないで藍とだけ支え合って生きていけたなら。
その覚悟もないのにこれ以上、藍と共に同じ時間を同じ部屋で過ごしていてもいいのか。
堂々巡りの思考に深い溜息を吐いた。
きっと答えは出ない。正しい答えなんてない。選んだ道が自分にとっての正解になる。
「ただいま」
考えを巡らせているうちに藍が帰宅して永絆の座るソファの隣に腰を掛けた。
流れるような動作で永絆の肩に腕を回し、藍の肩へと引き寄せる。永絆はそれを抵抗もせずに受け入れ、肩に頭を預けた。
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