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第95話

「あの……?」  こんな印象的な少女、一度見たら忘れる筈がない。知り合いでもないのに名前を知っていて顔も認識されている事に警戒して一歩後退った。 「いきなりで申し訳がないんですけど、私、茉莉花と言います」  永絆の目の前まで来るとピタリと両足を揃えて永絆を見上げてきた。姿勢の良さが育ちの良さを物語っていた。 「紫ノ宮藍さん、知ってますよね?」  その名前にドキリとした。  薄々予想はしていたが、やはり彼女は紫ノ宮の関係者なのだろう。着ている服や身に付けているアクセサリー、所作の綺麗さを見れば一般人でないのは分かる。 「貴方が、彼の運命の番と聞きました」 「……誰から?」  永絆と藍が運命の番である事を知っているのは極少数だ。中根と藤、送迎をしてくれていた運転手、菫。永絆が知る限りはこれだけの筈だった。 「本人から聞きました。紫ノ宮藍様から。先日、紫ノ宮家での顔合わせで運命の番がいるとご両親や私の前で言ってました。事実なのですか?」  驚いて頭がすぐに回らなかった。先日とは藤とあった日の事だろうか。あの日、実家に行ったと言っていた。その時に藍は両親やこの茉莉花という少女に自分の事を話したということなのか。 「どうなんですか?」  答えない永絆に痺れを切らして再度問いかける茉莉花の剣幕にこの場から逃げ出したくなった。

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