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第96話

「……藍が、嘘をつくと思いますか?」  藍が本気で自分を番にするつもりなんだとやっと実感が出来た。両親に話をするのにどれほど覚悟がいったか。それを考えると諦めていた番の夢がまた火を灯し始めた。 「そうね……実直な方だから、大事な席でくだらない嘘はつかないと思います」 「大事な席?」  そういえば彼女は一体、藍の何なのだろうか。  妹が居るとは聞いていないし、藍の両親と顔を付き合わせる事が出来るのだから只の知り合いではないだろう。 「聞いてません? 先日、正式に婚約をする予定だったと」 「……婚約?」  視界が真っ暗になった。  紫ノ宮の跡取りともなればそういう話があってもおかしくはないし、いずれは相応しい相手と結婚するのだろうと予想はしていた。  けれどまさか、まだ大学在学中に婚約の話が出るとは思っていなかった。  それに藍はあの日、こんな大事な事を何も言わなかった。言わないまま、永絆を抱いた。  思わず自分の体を自分で抱き締めた。急に体が震えて寒くて仕方ない。 「番がいるからと言われて正式な話は保留になりましたけど。どんな方なのか見たくて声を掛けました。藍様が番いたいと思う程素晴らしいΩなら私も納得出来ると思って」  だけど、と彼女は言葉を続けた。

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