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第100話
藍は拒否したと茉莉花が言っていたが、彼女が永絆に会いに来てまで忠告をしたのだから藍がどんなに拒んでも婚約の話はなくなりはしないのだろう。
いつか来ると思っていた現実がもう目の前に来ていた。心構えをしっかりと出来ないまま、自分の立場がどれだけ弱いのかを知らされた。
藍とこれからも一緒に居るには、自分は日陰の身で在り続けなければならない。簡単に言えば愛人。いや、ただのペットだ。
Ωにだってプライドはある。誰彼構わず足を開く訳じゃない。好いた相手と一緒に生きていきたいと願うのはΩもαも変わらない。
「永絆、いるのか?」
玄関のドアの開く音がして藍の声が響いた。
まだ考えがまとまっていないのにどんな顔をして藍に会えばいいのか分からない。上手く笑えそうにない。
リビングのドアが開いて藍が入ってくる。一瞬でリビングが藍の花の匂いでいっぱいになって永絆は安心感と同時に切なさを感じた。
「永絆、どうした? 体調でも悪いのか?」
ソファに座ったまま動こうとしない永絆を心配して藍が永絆の隣に腰掛けた。優しく髪を撫でる藍の手は暖かくて、ゴチャゴチャになっていた全ての事がどうでもよくなってしまう。
だけどそれじゃあダメなのだと口唇を強く結ぶ。
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