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第101話

「永絆……? ここどうした? 切れてる」  不意に噛んで傷付けた口唇に触れられて、肩がビクリと跳ね上がった。その反応に藍も驚いて目を丸くする。 「永絆……何があったか説明しろ」  優しかった口調が厳しいものに代わり、恐る恐る見た藍の顔は怒っているようだった。 「……この間……実家、行ったんだよね?」  初めて身体を繋げたあの日、藍は実家から帰宅した後だった。いつものくだらない呼び出しだと言って、それ以上何も言わなかった。 「何の用だったの?」 「何の、って……別にただ顔見せに行っただけで用事があった訳じゃないけど」  どうしてそんな風に誤魔化すのか。  婚約の話をしたら不安にさせると思っているのだろうか。  それはきっと永絆を思って黙っているのだろうけれど、大事に思っているのなら包み隠さず言ってほしいと思うのは我儘なのだろうか。 「……会ったよ、今日」 「誰に?」 「……茉莉花さん」 「え……?」  その名前に藍の表情が崩れた。顔色が変わって、更に怒りが増したように見えた。

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