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第102話
「婚約、するからって」
「オレはするつもりはない! はっきり断ったし、永絆の事もちゃんと言った!」
「うん、聞いた。だから婚約は保留になったって。でも……番にはなれないと思えって言われたよ」
自分で思うよりも、他人に言われた方が言葉の威力は鋭い。分かっていたことなのに予想以上のダメージを受けている。
「番わずに、子供も作らずに、ただ囲われているだけなら構わないって」
言って、それがどれほど虚しい事か思い知る。
藍が自分の元に来るのをただ待つ日々。そんな人生を送るだなんて。
「ねぇ……藍もそのつもりでいるの? オレは、藍の一番にはなれないの?」
「そんなわけっ……」
永絆を強く抱き寄せて藍は言葉を詰まらせた。
永絆にどう伝えれば安心させられるのか、頭をフル回転させるが抱き締めた永絆の身体の冷たさに取り戻せない何かを失ったと気が付いた。
「どうして……何も話してくれなかったの……? どうしてあの日、オレの誘いに乗ったの……? どうして……あれから抱いてくれないの?」
虚ろに疑問を投げかける永絆に藍は何と答えるべきか分からなかった。
何を言っても今更で、永絆には言い訳にしか聞こえない。感情を失った声が何度も「どうして」と呟くのを抱きしめて聞いているしかなかった。
「……永絆……。永絆が好きなんだ。他には何もいらない。永絆がいれば紫之宮なんて捨ててもいい。だけどオレが捨てたって、連れ戻されたら永絆を一人にしてしまう……。オレは永絆と一緒に居られる方法を探してるんだ」
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