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第106話
藍の部屋に行ったのはそれからまた二日経ってからだった。
合鍵を預かっていたのでそれで中に入り、玄関に藍がいつも履いている靴があるのを確認してから一緒に来た藤とリビングへ進んだ。
リビングに藍の姿はなく、自室にいるのだろうと部屋の扉をノックする。
中からガタガタと大きな音がして直ぐに藍が扉を開けた。
「永絆……」
慌てていたのか積まれて置かれていた本が崩れて散乱しているのが隙間から見えた。
「藍、あの……」
藤の事を紹介しようと口を開いた瞬間、思い切り引き寄せられ抱き締められた。それは痛いほど強い抱擁で、それと共に漂ってくる藍の匂いに一瞬うっとりしてしまいそうになった。
「大学で見かけないから心配した……」
冷静になろうと話し掛けると藍の腕に僅かに力がこもった。
「藍……話があるんだ」
強く抱き締められた腕からゆっくり離れると後ろで待機していた藤を見た。藍も視線を藤に移して怪訝な顔をする。
「高校の友達。この間会ったって言ってた、藤だよ」
「どうも」
余所行きの笑顔を貼り付けて藤が会釈をする。その間も藍はただ藤を訝しげに見ているだけだった。
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