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第107話

「……永絆、オレも話があるんだ」  永絆の肩を掴むと一度離れた身体をまた寄せてくる。 「なに?」  藍の表情は切羽詰まった様子で、自分の部屋に戻っていた数日に何かあったのかと心配になった。 「永絆の言ったことをずっと考えてたんだ。オレはまた永絆の事をちゃんと考えずに、紫ノ宮に認めさせれば問題ないと思っていた。もっと永絆と話し合うべきだった」 「……それをずっと考えて、大学にも来なかったの?」  部屋に閉じ篭って、声を掛けても出てこなかったのは藍の方で、一人取り残されたまま藍の出方をずっと待っていた。大学に行けば会えると思っていたのに藍は閉じ篭ったまま、紫ノ宮家をどうするかばかり考えていた。 「αって頭が良いのに、人の感情には疎いんだね」  考えて欲しかったのは、そんな事じゃない。  二人一緒の未来なんてないんだと納得してもらいたかった。藍に囲われる生活などしたくないと分かって欲しかった。  紫ノ宮の事をいくら話し合っても藍と共に生きてはいけない。藍には茉莉花か、又はもっと優秀なαと結婚するのだから。その事実は変えられない。  例え藍が紫ノ宮を捨てても、どんな僻地に逃げても連れ戻される。  散々考えて藍との未来はないと答えを出した。覆す事はない。

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