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第112話
「ねぇ、永絆、あのさ」
「……うん?」
やっとペットボトルを口にして水分補給をした永絆の隣に腰掛けた藤が言いづらそうに口を開く。
「永絆さえ良ければ、俺とホントに番にならない?」
「え……?」
永絆となら番になってもいいと藤は前に言ってくれた。でもそれは社交辞令だと思っていた。
「うちは一般家庭でめんどくさい事なんて何もないし、永絆は昔からよく知ってる間柄だし……俺となら、そんなに泣かなくて済むよ?」
どういうつもりで言ってるのだろう。藍との事を同情して言っているのだろうか。それとも本気で番いたいと思っているのだろうか。それはつまり、友情以上の好意が藤にあるという事なのだろうか。
泣き過ぎてよく回らない思考では藤の気持ちを汲み取る事は出来なかった。
ただ、藤の優しさにこれ以上甘える訳にはいかないとは思った。
「藤、あの……」
「今すぐじゃなくていい。ゆっくり考えて」
「藤……でも……」
時間を掛けて考えても藍への気持ちが変わる事はない。それは運命という深い絆があるから。
そんな気持ちを残したまま藤の優しさに凭れ掛かるのは、藤に失礼だ。
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