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第115話

***  携帯には藍からの着信が引切り無しにあって、その全てを永絆は無視し続けた。  大学へ行けば何処かでばったり会ってしまうかもしれないと思い、藍が講義を受ける日は大学を休んだ。あまり休み過ぎると良くないのは分かっていたが今はまだ藍には会えない。  もし会ってしまえば折角の決心が鈍りそうで怖かった。  藤はあの日以来、毎日一回は連絡をくれた。藍の着信で埋め尽くされる携帯の履歴の中に藤を見つけるとやるせない気持ちになる。  結局、誰も選ぶ事が出来ず全部無理やり拒んで終わらせた。  これが自分勝手な我儘なのは百も承知で藍も藤も傷付けた。そんな自分が幸せになれるだなんて思ってはいない。だからせめて二人には自分の事など忘れて幸せになって欲しいの祈った。  菫の月命日に毎月、菫が好きな花を持って墓参りをする。今日も大学で講義があったけれど藍に会いたくなくてここに来た。  きっと菫は呆れているだろう。  この場所で藍に「連れて行って」と告げた時に見た菫の幻は優しく笑っていた。己の感情に素直に従った永絆を見送ってくれた。  けれど今はどうだろう。溜息を吐きながら「馬鹿な子だね」と言っているかもしれない。それでも菫は暖かく頭を撫でてくれるのだろう。

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