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第127話

 閉じ込められている事に対して不快感は無かった。菫ももういない。自分が突然消えても誰も心配しないだろう。もしかしたら居なくなった事さえ気付かれないかもしれない。  それに藍の家がこの状況を黙って見過ごすとは思えない。どのくらい遠い場所に来たのかはわからないが、藍がずっと帰ってこなければ紫ノ宮家は徹底的に探すはずだ。もしかしたら既に捜索されているかも。  いずれにせよ、時間の問題。すぐに見つかって終わりだ。 「永絆、起きてるか?」  ベッドの上で髪を乾かしていると鍵の開く音がして藍が入ってきた。手には買い物袋を持っていて、永絆の姿を見てホッとしたのか顔を緩ませた。 「昨日から食べてないからお腹空いてないか? 近くで色々食べ物とか買ってきた」  永絆の横に座り、ベッドの上に買ってきた物を袋から全部出すと「どれがいい?」と訊かれ、ひとまず水のペットボトルを手にした。ずっと喉がカラカラだったのでキャップを開けると一気に半分飲み干し、やっと一息ついた。  藍はサンドイッチを開けてパクパク食べ、次におにぎりを手にした。 「ここって、藍が借りてる部屋?」 「いや、買ったの。マンションごと。誰にも内緒で」  流石、紫ノ宮の跡取りはお金の使い方が違う。一般庶民がマンションを買うのに一体何年ローンを払っていかなきゃいけないのか藍はきっと知らないのだろう。

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