127 / 199

第128話

「誰もここを知らない。オレと永絆だけしかいない。他のフロアには住民がいるけどこの部屋だけは紫ノ宮の誰にも話してないから簡単に見つからないよ」  おにぎりを大きな口で頬張る藍。本気で見つからないと思っているのだ。 「藍、オレ、逃げたりしないから鎖外してくれないかな?」  ここまでされたらとことん藍に付き合うつもりだ。最初から逃げるつもりもなかった。鎖なんてなくてもここにいる間は藍から離れたりしない。 「それはダメ。その鎖は番が成立するまでは外さない」 「番って……藍、それはダメ。番にはなれないって言ったよね?」 「ああ、だから無理やりにでも番う事にした」  あまりにも簡単に言うものだから、永絆はその言葉を理解するのに少し時間がかかった。  誰かがこの場所を見つけるまでは藍に付き合って一緒に過ごそうと思ってはいた。きっとすぐに見つかるから、少しだけ藍との時間を楽しもうと。  けれど藍は永絆の意思さえ無視して番を成立させようとしている。  最後に発情期が来たのはいつだったか。かなり狂っていたし、発情期になっている感じはするのにフェロモンの分泌がおかしくなっていたから正確な周期がわからない。

ともだちにシェアしよう!